トルテとクッキーのおはなし - 4




おかしなおかし


それから1ヶ月ほどクッキーと共闘し旅を続けた。結論から言うと、想定していたほどではないとはいえ弱い。以前から練習していたらしく合流後1週間でギラを扱えるようになったりと成長っぷりはなかなかだが、根本的に体力が追いついていなかった。整備された街中や中心街道はともかく、足場の悪い森を抜ける時なんか10分ちょっと歩いたらあっという間にへたってしまう。銀の鍵を取りに西方の洞窟へ行く時など、途中で毒を受けすぎて魔力まで尽きてしまい、ここで旅が終わってしまうのではと散々肝を冷やしたものだ。
今も木の根に足を取られて派手に転んだばかりで、軽く眩暈を起こしたというので休憩している最中だった。近くの沢で濡らしたタオルを手渡すと、頭を冷やしながら泣きそうな声でごめんと謝られる。

「僕、やっぱりトルテの足引っ張ってるね」

「またその話か。むしろ人並みなんだから気にするなって言ったろ」

励ましたつもりだったが、クッキーは悔しそうに俯いた。腰に下げた鞘を握る手が震えている。もうキアリーは覚えたものの、中身の剣は未だ錆びたままだ。

「そんなこと僕にだってわかるよ。でもこれはハーゴン討伐のための旅だ、このペースじゃムーンブルクに着くのもいつになるか分かったもんじゃない。早くプリンを探し出さなきゃ」

なるほど、王女の安否を一刻も早く確かめたくて焦っているのか。ムーンブルク落城からもう随分と時間が経っている為生存を楽観視はできないが、だからと言ってゆっくりしていていいわけではない。

「気持ちはわかる。俺だって王女を早いとこ見つけたいが、焦って途中で死ぬようなことになったらむしろ捜索が長引くだけだぞ。慎重になれ」

クッキーはぐっと押し黙る。しばらく深呼吸をした後顔を上げたら、目尻の涙はもう引っ込んでいた。

「……そうだね。ごめん、自分だけ成長できてないって思ったからつい」

「使える魔法の数も精度も上がってるし、成長はちゃんとしてる。…ところでプリンって名前もお前が決めたのか」

「うん、プリメアだからプリン。でも僕のクッキーって呼び方は、元々プリンが付けてくれたんだよ」

そんな由来初めて知った。クッキーが王女と面識があることは知っていたが、そんなに親しかったとは。自分も確かに何度か会ったことはあるが、魔術の才に秀で、理知的な年長の彼女に対して気後れしていたし、何度目かに会った時きつく叱られてからは頭が上がらない。叱られた原因は勿論、逆切れでクッキーを張り倒したことだ。

「そうか。お前が探していることを知ったら、王女も喜ぶだろ」

「頑張るよ。プリンに会ったら僕たちみんなで”お菓子なパーティだ”って言わなきゃね」

「…あぁ、そうだな」


思わず苦笑した。さっきの落ち込みようはどこへやら、もう王女を見つけた後のことを考えているクッキーに感心する。ひょっとしたら既にこの世にないかもしれないと危惧している自分とはまるで考え方が違うが、だからこそ一人でいるより気持ちが上向く。次の街はもう目と鼻の先だ。



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