トルテとクッキーのおはなし - 9




前夜ふたたび


2日目の夜、寝ているところにクッキーが近寄ってきて揺り起こされる。用件は見当がつくが、正直言って今は眠い。でも聞いてやらなきゃ向こうが眠れなくなってしまうだろうし、仕方なしに起き上がった。

「王女がそこにいるのにいいのか」

「……プリンじゃないかもしれないし」

「ずいぶん都合がいいんだな、まぁいいや。ほら」

毛布を退けて手を広げる。クッキーは遠慮がちに近づいてくるが、面倒なので先にこっちから抱き寄せて髪の毛をくしゃくしゃに撫でた。この綿の塊のように柔らかいくせ毛を触るのは割と好きかもしれない。どういう風に触ってやれば満足するかいまいち分からないから、とりあえず手探りで弱そうなところを攻めてみる。裾から手を入れて脇腹をなぞりながら押し倒すと、一度はその身を強張らせた。

「その…あんまり…」

「わかってる、こないだと同じところまでだ。嫌だと思ったらすぐ言え」

顔を赤らめてこくりと頷くクッキー。寝巻きを膝上辺りまで下げ熱くなったものに触れると、この間よりも準備ができている故か歓喜の声が漏れた。
別に自分は明確にそっちの気があるというわけではない。これまで経験自体はなかったが、王侯貴族の間じゃ一種の嗜みとしてよくあることで、単純に精神的抵抗がない。それはクッキーも同じだろうが、こっちは多分本気だからどうしていいか正直未だに戸惑っている。こうやってたまに相手してやるのに支障はなくても、旅の同行者として、友人として以上の関係を築くのとは話が違う。

(…可愛いとは思うが)

柔らかい麦藁のような光沢のある金髪、夜目にも明るく光る萌黄色の瞳、細い輪郭や愛嬌は誰が見たって羨むべき美点だ。まだ内面までそうとは言えないが、一国の王子に相応しい気品は備えている。嫌う人間など少ないだろう。
浅い呼吸を繰り返しながら、クッキーが肩にしがみつく。手を動かしながら上も脱がせ、現れた白い肌には傷一つない。鎖骨の辺りに顔を近づけて口付けると、そこが良いと示すように鳴いた。

「はぅっ、う、んんっ」

「声は我慢するなよ、その方が楽だ」

「うん…」

返事をしながら、クッキーの目線が別の方向に向いている。その先を見ると、王女かもしれない仔犬がいつものようにぐっすりと寝入っていた。

「今更王女のそばでこんなことしてるのが気になるか?」

「ち、違うよ…あぅっ!?」

「違わないだろ、さっきからずっと気にしてるの丸分かりだぞ」

「や、ちがう、そん…なの、あぅぅっ」

ぬるついた手を少しずらして会陰を軽く攻める。クッキーの足が跳ね、肩に回された手にわずかに爪を立てる感触があった。指の腹で擦るたび、手の中でびくびくと熱が生き物のように動く。肩に埋めていた顔を上げてクッキーを見ると、受け止めきれない快感に戸惑うような不安げな瞳で真っ直ぐに見上げられた。

「とるて…も…きそう…」

早い。まだ自分で慰めるのもそんなに経験があるわけではないと見える。……ちょっと意地悪したい。会陰を撫でる指はそのまま、分身を弄ぶ手指を締めて根元を圧迫するとクッキーが苦しげに呻いた。

「なん…でぇ……」

「たまには我慢も覚えとけ。声は我慢しなくていいからな」

責める語調に受け取られないようできる限り優しく、耳元で囁く。囁きながら、指は少しずつ勢いを上げる。クッキーは半分泣き出しながら、どうしていいかわからずただ足先で毛布を掻いて必死にもがいた。次第にクッキーの腰が震え、目の端から涙が溢れていく。立てた爪は離れ、しがみつくだけで精一杯というふうに浅い呼吸を繰り返す。

「もう…だめ……」

か細い声でクッキーが呟く。嫌だとは言ってないが、もう潮時か。頷いて手を緩め、震える背を抱いた。

「ひっ あ、あぁぁっ、ぅあぁあ…」

焦らしに耐えた分、前よりも射精が長く続く。歯を食い縛るクッキーの尾を引く嬌声を味わいながら、なぜか王女の顔を思い浮かべた。

もたれかかったその肩を掴んで起こすと、疲れたのかそのまま気を失って眠っている。体を拭き、寝巻きを元通り着せて横たえると、何もなかったかのような静かな寝息が耳に心地良い。わざわざ隣の寝台に寝かせるのも面倒で、眠るクッキーを抱き枕代わりに引き寄せて目を閉じた。



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